スターバックスやマクドナルドなど、大手食品チェーンでプラスチック製ストローの利用を廃止する動きが広まっている。日本でも2020年の東京オリンピックまでにレジ袋の無料配布の禁止義務化が検討されており、プラスチックごみの削減は大きな潮流になっている。こうした動きの背景には、マイクロプラスチックなどの「海洋ごみ」が生態系や環境に与える悪影響が顕在化してきたことが挙げられる。
2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)の中で「目標13:海の豊かさを守ろう」が掲げられており、海洋1平方キロメートル当たり平均で1万3000個のプラスチックごみが見つかっていることや、漁業資源の乱獲などが解決すべき課題として挙げられている。
海洋資源の保全と持続可能な利用の強化は、世界的に重要な取り組みになっていくだろう。
多くの課題を抱えながら、持続可能な開発の舞台としても注目される海洋領域――その広大なフィールドで活躍する国内外のスタートアップ5社を紹介しよう。
設立:2013年 累計調達額:約3540万ドル
The Ocean Cleanupは2013年にオランダで設立されたスタートアップ。ハワイとカリフォルニアの間にある太平洋ごみベルトのプラスチックごみを回収するための、チューブ型の装置を開発し、実証実験に取り組んでいる。
チューブ型のごみ回収装置は海流や波、風などの力を利用して動くため外部動力を必要とせず、照明などの電源はソーラー発電によって賄う。現在は小さなユニットでの実験を行っている最中だが、必要な台数がそろえば太平洋ごみベルトの廃棄物を5年ごとに50%削減できるという。
設立:2016年 累計調達額:約1290万ドル
日本とシンガポールに拠点を持つウミトロンは、水産養殖にテクノロジーを活用することで、持続可能な海の開発と、人口増加よる食糧問題の解決に取り組むスタートアップだ。
水産養殖事業者向けの遠隔自動給餌機や生け簀内のデータ取得サービスを通じ、労働環境の改善や環境保全、事業コストの削減や生産ノウハウの伝承による食の安定供給を目指している。
共同創業者で代表の藤原謙氏はJAXA、三井物産を経て起業。 国内だけでなく海外の養殖産業の効率化も支援している。
設立:2012年 累計調達額:約8850万ドル
地表の7割を占める海洋は、地球を観測するためのデータの宝庫ともいえる。有人での到達や長期間にわたる観測が難しい場合に役立つのが無人の水上艇だ。
Saildroneは無人の水上艇を開発し、世界中で海洋や大気のデータを収集している。正確な気候の情報や海洋の炭素濃度、オイルの検出や動物の追跡などが可能で、ユーザーの希望に合わせた航路で情報収集を行える。2019年1月19日から8月3日にわたる196日間の航海では、無人システムとして初めて南極大陸の周回を成功させた。
設立:2016年 累計調達額:約480万ドル(400万ポンド)
遠隔操作型の無人潜水機はROV(Remotely operated vehicle)や水中ドローンと呼ばれている。ROVCOはROVの開発とそれを用いたソリューションビジネスを提供する企業だ。
ROVCOが対象とする領域は広く、たとえば洋上風力発電装置の検査や、学術的な地形の調査にも用いられている。海中の情報を正確に取得できることが強みで、海中の物体や地形の3D形状をリアルタイムに取得することも可能だという。
設立:2004年 累計調達額:約1500万ドル
Ocean Renewable Power Companyは、海水の移動エネルギーを電力に変える潮力発電に取り組んでいる。独自に開発したTurbine Generator Unit(TGU)と呼ばれる技術を用いて、ガスを排出せずに電力を生み出すことができるという。
(調査・文:淺野義弘)
※各社の累計資金調達額は2019年8月時点での公開情報・為替レートに基づいています。
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