DMM.make AKIBAのビジネスメディア「FACT」

「VIVA Technology 2019」に見る日本とフランスのユニコーン創出プロセスの違い

DMM.make AKIBAでは、2019年5月13~19日の日程で、フランスのスタートアップとオープンイノベーション動向を体験できるビジネスツアー「THE SHIFT tour ~VIVA LA FRANCE~」を実施。その目玉の一つは、近年注目を集めるヨーロッパ最大のテック系イベント「VIVA Technology(ビバ テクノロジー)」の視察だ。
DMM.com本社にて2019年6月6日に実施した「VIVA Technology 2019報告会」は、100人以上に参加いただくなど好評を博した。今回、同報告会にご登壇いただいたFutuRocket CEO & Founder 美谷広海氏によるレポートにフォーカスしてお届けする。

 

2016年に始まり今年で4回目となる「VIVA TECHNOLOGY(以下VivaTech)」は、パリで開催される大企業とテクノロジー系スタートアップのイベント。今年は入場者12万4000人、スタートアップ1万3000社、参加国は実に125カ国と、CESに勝るほどの盛り上がりを見せている。出展:Viva Technology

 

VivaTechの魅力とは

いろいろな魅力があると思いますが、私自身は大企業とスタートアップが一緒になった新しいフォーマットのイベントだと思います。海外のスタートアップイベントとしては、「SLASH」や「Pioneers Festival」、「4 years from now」 などが有名ですが、VivaTechが他と違うところは大企業とスタートアップが融合していることでしょう。

FutuRocket株式会社 CEO & Founder 美谷広海氏
FutuRocket株式会社CEO & Founder。VivaTechには4年連続で参加している。これまでCerevo在籍時の2016年にVivaTechの仏アクセラレーターekito社によるピッチコンテストで優勝、2017年にはVivaTech側から招待されてピッチと展示に参加、2018年にはJetroのブースに出展、ピッチを行うなど、日本でVivaTechにいちばん詳しいと言っても過言ではない。

各業界をリードする大企業が、それぞれ50社100社という数のスタートアップを集めています。
例えば、フランスのテレコム最大手Orangeのブースには、コネクティビティに関連したスタートアップが中心で、フランスのテレビを中心としたメディア会社TF1では、コンテンツ、メディア関連、広告関連のスタートアップが出展していました。他にもスーパーマーケット大手のCarrefour(カルフール)は飲食関係を、高級ブランドグループのLouis Vuitton(LVMH:ルイ・ヴィトングループ)はラグジュアリーに関連したスタートアップを支援するなど、産業ごとでそれぞれの分野の大企業が、様々な視点で問題解決にあたったり、ユニークなテクノロジーを持っているスタートアップを支援したりしています。

全3日間の日程で、1、2日目は英語ベースの商談やミートアップが中心になりますが、3日目はパブリックデイに近い形を採用しフランス語で行われるイベントが開催されています。子どもと一緒に最新の技術に触れようといった親子連れも多く、ローカルな無料パスが出ているようです。基本的には3~4万円のパスが必要な有料イベントなのですが、今年は12万4000人の来場者を集めました。CESが約10万人ですから、それを超える大イベントに成長したと言えるでしょう。

 

VivaTechから見えてくるもの

今年のVivaTechを見た印象として、少し大企業寄りになったかな、と感じています。企業のブースでは、イノベーションを必要とする企業が課題を提示し、ソリューションを持つスタートアップのエントリーを求め、それに対して世界中から数百社のスタートアップが応募しています。

これは裏を返せば、各産業領域で何が求められているのかが分かるということです。スタートアップとの協業や同業他社の競合調査にも使えます。自社のサービスを考え直すという視点でもすごく参考になるのではないでしょうか。世界中から何千社もが集まるイベントなので、なかなか全体像をお伝えするのが難しいのですが、いくつかの展示をご紹介します。

 

Aeromobil

Aeromobilの実物大モックアップの展示

これは、Hall2の入り口前に大型のモックアップ展示していた、空飛ぶ自動車Aeromobil(エアロモービル)です。試作機の制作過程も公開していて、実際にプレオーダーを受け付けているものです。

 

Citroen

citroenのコンセプトカー。

今年は自動車メーカーのcitroen(シトロエン)が初出展していました。ワイヤレスでチャージできる電気自動車のコンセプトカーと、ドアノブにベルトのような持ち手が付いた、フランスらしいオシャレなコンセプトカーが展示されていました。カーシェアリングを意識したQRコードが貼られていたりと、細かい点も印象的でした。

また、VivaTechには地方自治体も積極的に出展しています。ほぼ全部がFrenchTechブランドを掲げて、各自治体が競い合っている感じがします。その中のひとつ、Marseille(マルセイユ)のブースで特徴的だったが、次にご紹介するNauticspotです。

 

Nauticspot

Nauticspotは、スマートブイによる港湾情報管理システムを展示していた

これは、港に浮かぶブイをIoT化するサービスで、センサーを組み込んだブイを配置することで、湾内外の波高や海水温度などをセンサリングしたり、或いはボートを係留場所へと誘導したり、沿岸部という地域のニーズにあった好事例だと思います。

 

フランスと日本、スタートアップの違いは

フレンチテック全体についてですが、世界を大きく変えるようなイノベーションだけではない、もっと身近なものが多いです。例えばLe Ciroirは、自動で靴磨きをしてくれる、とてもフランスらしいマシンです。
こんなニッチなものは、日本だとちょっとスケールしないよね、という意見が出そうなアイデアかもしれません。これを形にしてくるところが、フレンチテックの違うところです。

Le Ciroirの「自動靴磨き機」

もちろん、これは商売になるのだろうか?という視点も必要ですが、今までに無いような高性能の靴磨き機があってもいいよね、という着想は間違ってはいません。私がフレンチテックに参加して特にここ数年感じていることですが、例え誰でも出せるようなアイデアのタネでも、ちゃんと磨こうとする。もしかしたら、今までになかったものが芽吹いて、世の中を少し変えられるかもしれない。取り敢えずアイデアを磨いてみようよ、という視点を感じます。

 

フランスのスタートアップエコシステムから学べること

フランスのエコシステムは、明らかに質より量を追いかけています。正直に言って、VivaTechに展示しているスタートアップにも、技術的に目新しいとは言えないものもたくさんあります。フランスの企業、スタートアップが上手いと思うのは、プレゼンテーションや提案力。技術がすごいというよりも、どのようなスタイルを実現するのか、たとえ誰でも出せるようなアイデアでも、それを磨いて、「これいいね」と言えるものにまで持っていくのが上手い。尖ったテクノロジーではないけれど、その技術をどのように生活の中に溶け込ませていくのかというアプローチが、とても面白いです。

そして、VivaTechに参加する大企業の人たちと会って思うのは、誰もが否定から入らないこと。どんなアイデアにも、それなりの可能性があります。そのアイデアの可能性、ポテンシャルを引き出してあげるのかに、とても力を注いでいると感じます。

一方で、日本のアクセラレーターは、最初から篩(ふるい)に掛けているというか、伸ばすよりも選抜するというケースが多いように思います。最初から勝ち馬を選び出そうとし過ぎるあまり、結果的に面白いことになるかもしれないアイデアのタネを育てるチャンスを失っているのではないでしょうか。

 

スタートアップ支援は分散投資という考え方

スタートアップとの協業、支援する側であるフランスの大企業視点についてですが、個々の「打率」については、実はあまり見ていないような気がします。
これも日本とフランスとの大きな違いになりますが、大企業側はスタートアップに対する投資を、人件費的、R&D的な必要コストとして捉えている面があります。

分かり易く説明すると、例えばある企業が新たに研究所を立ち上げて運営しようとすると仮定します。この場合、研究者を雇用し、施設にも投資し、少なくとも合計で数億円規模が必要になるでしょう。フレンチテックの企業には、1件数億円の投資はリスクが高いという見方を持っています。それよりも、1件500万円、1000万円というコストでスタートアップ数十社に分散投資したほうが良いというマインドがあるわけです。そのため、個別案件が成功するのか失敗するのかは、あまり見ていません。

日本のエコシステムが、ユニコーン狙いに絞りすぎていると言いましたが、そこには集中と選択という発想があるのではないでしょうか。VivaTechをはじめ、フレンチテックのエコシステムは、数が集まればこそユニコーンが現れる、という考え方をしているのが、日本との大きな違いだと感じています。

ツアー参加者によるパネルディスカッション。左からSpiral代表取締役 石川知寛氏、美谷氏、資生堂 R&D戦略 中西裕子氏、Bouygues Asia Head of New Business Development Samir Bennafla氏

(取材・文:後藤銀河)

 

DMM.make AKIBAによるVIVA TECHNOLOGY 2019現地の様子をまとめた資料を配布しております

ご興味のある方は以下よりダウンロードいただけます






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