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新規事業担当者なら知っておきたいハッカソンの作法シリーズ―「知的財産権」と事業化へのハードル

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第一回ではハッカソンにおける目的設定の重要性について紹介しましたが、特に事業化を目的としたハッカソンの場合、参加者と企業側のあいだの利害関係を丁寧に考慮する必要が生じてきます。

そこで、ハッカソンにおける知的財産権の考え方についてご紹介。ハッカソンで得られた成果をどのように業務につなげるかについてもお話します。

ハッカソンにおける知的財産権

企業が新事業創出を目的としたハッカソンを手掛ける場合、生まれたアイディアや成果物の権利をすべて企業に帰属させたいと考えるケースが少なくありません。

しかし、参加者の視点で考えてみれば、少なからぬ時間と労力を費やし、そして時には参加費用まで払って参加しているので、全ての権利が企業に帰属されるとなれば、あまり良い気持ちはしません。

また、ハッカソンなどオープンな場でのものづくりに親しんでいる方が参加する場合、そこで生まれたアイディアが本当に価値のあるものであれば、それを自身やチームで事業化したいと考えるケースもあります。

事業化のために権利を企業に帰属させたいとしても、完全に帰属させてしまうと外部の参加者にとってのメリットが薄くなってしまう。このように、知的財産権においても企業と参加者双方のメリットを調整する必要がありますが、それを助けるひとつの道具として、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]の小林茂教授が作成した「ハッカソン/メイカソン参加同意書と終了後の確認書およびFAQ」を参照することを勧めています。

ハッカソン/メイカソン参加同意書と終了後の確認書およびFAQ

この同意書においては、イベント中に作成された成果物(文章やスケッチ、CGデータやプロトタイピングしたハードウェアなど)に関しては、

著作権(著作権法第27条および第28条の権利その他の権利を含みます)、特許権、実用新案権、意匠権、商標権等の知的財産権(中略)その他一切の権利は、作成した参加者自身に帰属します

とされ、作り手である参加者の権利が保証されています。

また参加者が提供したアイディアについては、

申出および参加者による権利化がなされないかぎり、人類の共有財産(パブリックドメイン)として、他の参加者を含めた第三者が、無償で自由に利用することができます

とされ、企業にもそのアイディアを利用する権利が認められています。しかし、参加者による申し出や権利化の余白を残していることに大きな特徴があると言えるでしょう。

DMM.make AKIBAでは、基本的にこのテンプレートを元にして、各企業の法務部の意向などを反映した同意規約書を作成しています。

基本的には同意書にもある通り、権利をオープンにする内容で作成しますが、どうしても権利を主催者側に帰属させたい場合は、インセンティブを高く設定するなど、参加者のメリットも配慮する必要があります。

オープンな場における知的財産権を企業の法務部門で扱うことが少ないせいか、企画の最終段階まで細部が決まらないこともありますが、外部からの参加を募る場合には絶対に避けては通れない問題なので、企画の初期段階で考慮しましょう。

事業につなげるための準備

ハッカソンはあくまで短期間のイベントなので、その場だけで実用に耐えるようなものが完成することはとても稀です。得られたアイディアを事業化に向けてさらに進めるとなると、そこから先は主催した企業がどれだけ労力を割けるかにかかってきます。

ハッカソンで出てきたアイディアは既存の事業の枠組みに収まらないことも多いため、それを実現するために適切な部署が存在するとも限りません。もしハッカソンの担当者だけでその後のサポートを実施するのが難しいのであれば、事業化に向けて会社としてフォローできるような体制をあらかじめ準備しておくと良いでしょう。

過去に実施した例では、ハッカソンの優勝チームにブラッシュアップ用の資金を追加で提供したことがあります。

ハッカソン終了後に改良の機会を設け、改めて成果物を提出してもらうことで、企業として採用するにふさわしい事業であるかどうかをより慎重に判断することに繫がります。また、もし改良案が採用に至らなかった場合には、参加者にすべての権利を戻すことも考えており、参加者の努力や権利をできる限り重んじようとしている好例と言えます。

また、DMM.make AKIBAからメンターとして参加した、とある外部企業主催のアイディアソンでは、当日の成果物はあくまでアイディアや紙粘土で作ったようなラフな模型になるのですが、優秀な案はイベント終了後に企業側で試作することがあらかじめ決まっていました。1~2か月の期間と予算をプロトタイプ製作に費やし、ハードウェア部分についてはDMM.make AKIBAが依頼を受けて試作し、主催した企業が担当するソフトウェア部分と組み合わせるようなことを行いました。アイディアを出しただけで終わるのではなく、その先を一つでも準備しておくことで、その後の印象はまったく異なります。

これまで主に事業創出を目的としたハッカソンについてお伝えしましたが、たとえ社内交流が目的だとしても、「せっかく作ったアイディアを何かに活かしたい」という気持ちになることもあり得ます。また、製品PRを目的としたハッカソンでは、あえて完全にパブリックドメインにすることで、二次創作の発展に期待するという選択肢も考えられます。ハッカソン自体を成功させるための準備も忙しいとは思いますが、終わった後の振る舞い方も考えておくことで、より大きな成果を得ることに繫がっていくでしょう。

ハッカソン自体は短期間で終わるものですが、その前後にも考慮すべきことは広がっています。特に参加者と企業の権利関係や、事業化に至るまでの道筋は、事前に熟慮しておくべき事項になるでしょう。次回はオープンなハッカソンとクローズドなハッカソンについて、それぞれのメリットと考慮すべき点についてお話します。

(聞き手、編集:淺野義弘)

 

 

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渡邉仁史
テックスタッフとしてワークショップや講座、他企業共催ものづくり系イベント(ハッカソン等)の企画・運営等をこなす。慶應義塾大学卒。
中澤聖子
DMM.make AKIBAのイベントディレクターとして、大型イベントから小規模のセミナー・ワークショップまで、各種イベントの運営や企画受託案件を担当している。
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