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世界中を驚愕させたフレンチテック――3つの成功要因を探る

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2018年1月9日~12日に開催されたCES 2018。
今年はフランスから360の企業が参加し、スタートアップ専用エリアのエウレカパークには274社が出展しました。
今年もアメリカに次いで2番目の規模という盛り上がりを見せたフレンチテックですが、実際にビジネスにつながる成果を出しているスタートアップが多いというのも特徴です。

フランスのスタートアップ

ヨーロッパでもフランスのスタートアップは大きな存在感がある

実績としての数字をみると、フランスのスタートアップはVCからの資金調達総額は27億ユーロ(2017年1月~10月)。イギリスの23億ユーロ、ドイツの11億ユーロと比較しても、大きな成果を上げていることがわかります。
今回はフレンチテックがなぜ成功しているのか、その要因についてお話したいと思います。

フレンチテック成功の要因

他の国と比較してフランスのスタートアップが成功している理由ですが、私は大きくわけて、マーケティングプログラムコミュニティの3つがうまく機能しているためだと考えています。

フレンチテック

CES 2018でもフランスのスタートアップはフレンチテックの統一ブランドを掲げていた

巧みなマーケティング

これはフランス大使館の方に伺ったことなのですが、もともとフランスには起業家が少なからずいました。しかし、その存在感を世界に示せているとはいえず、それが長年の課題だったそうです。
そこでフランス政府主導の元、散らばっていたスタートアップたちを結集し、誰でもフレンチテックというラベルを自由に使えるようにしました。

統一したブランドを使うことで、フランスのスタートアップだと一目でわかるよう見える化し、彼らが世界中に進出していくのと同時に、フレンチテックのブランド知名度も高まるという仕組みです。
これには2つの効果があり、外から見える圧倒的なオシャレ感、ブランド感の演出に加え、中にいるスタートアップ自身がメインストリームにいると実感でき、カルチャーとしてもカッコイイ感を出すことに成功しています。

スタートアップをサポートする数々のプログラム

私が感じている日本とフランスのスタートアップを取り巻く環境の大きな違いのひとつに、サポートプログラムの機能があります。

日本では、行政や地域が施設を設営したり、単発の支援プログラムを展開したりと、個々にスタートアップ支援を進めているという印象がありますが、総務省が推進するスマートIoT推進フォーラムでさえ、情報交換会や共同コンテストの開催がメインで、情報発信という点からみるとまだまだ薄いようにも感じています。

それに対してフレンチテックでは、国内外のスタートアップをサポートするプログラム(前回ご紹介したPass French TechFrench Tech Ticket)を整え、フランスで活動するスタートアップの総数を増やしています。そしてフレンチテックのハブ都市が、各地のスタートアップを引き連れて積極的にホットスポットを巡業したり、ピッチを行い、商談につなげられるようビジネスのネタを探すなど、ハブ都市ごとに積極的なリレーション作りを行っています。

各ハブ都市

各ハブ都市のオリジナリティを出すブランディングも行う

DMM.make AKIBAにもこれまで、フランスのスタートアップがトゥールーズやボルドー、リヨンなどのハブ都市の代表として来館しています。
彼らは、その出身都市のお墨付きをもらったエーススタートアップであり、各都市の特色までも体現しています。例えばワインで有名なボルドーを拠点とするFrench Tech Bordeauxは、ぶどう畑など広い土地での実証実験がしやすいドローン系の企業を多数呼び込んでいます。

多くの支援者、コミュニティの存在、そしてフランスの国民性

パリは山手線の中くらいの広さしかありませんが、その中に40以上のインキュベーション施設があります。そして、政府や企業とは直接的な繋がりがなくても、自発的にスタートアップを盛り上げようとする支援者も少なくありません。

実はフランス人はディスカッションやディベートが好きな国民で、私の周りにいるフランス人からも、とにかく自分の意見をはっきり言って議論するという、討論好きな国民性を感じます。これがコミュニティを醸成しやすい環境を作っているのだなと思っています。

このようなコミュニティの存在はとても重要で、起業家である同志と出会える場でもありますし、失敗に陥りやすい起業家たちのセーフティネットとしても機能しています。このようなインキュベーション施設やコミュニティの中から、いくつかを選んで紹介します。

欧州最大級のインキュベーション施設「STATION F」

(リンク:https://stationf.co/fr/

STATION F

3万4000平方メートルの巨大なインキュベーション施設

フランスのスタートアップを語るときに忘れてはならないのが、2017年6月29日にオープンしたスタートアップキャンパス「STATION F」です。

1万坪を超える巨大施設には、24時間利用できる3000を超えるデスクが用意され、3Dプリンターやレーザーカッターなどを備えたメイカーズスペースやビジネス支援オフィス、ミーティングルームやイベントホールなどが併設されます。そこでは国籍を問わない1000人を超える起業家が集い、FacebookやMicrosoftといった20を超えるグローバル企業や組織が提供するプログラムに参加しながら、他の起業家や投資家とのネットワークを築き、起業までのサポートを受けることができます。

STATION Fを作り上げたのは、フランスの著名な投資家Xavier Niel氏。スタートアップに必要なすべてのエコシステムを築くという構想の元、古い鉄道駅舎を買収、2億5千万ユーロ(約320億円)の私財を投じて建設されました。

エコール42

(リンク:http://www.42.fr/

エコール42

エコールはフランス語で「学校」の意味ですが、エコール 42はその名の通り、優れたプログラマーを輩出しているプログラミングスクールです。
ただ、そこにはプログラミングを教えてくれる先生も、授業も、テキストさえありません。そこで生徒は次々に実践的なリアルワールドのプログラミング課題を与えられ、少人数のグループで協力し合い、インターネットを駆使して解決していきます。

The Family

(リンク:https://www.thefamily.co/

The Family

「Anyone can become an entrepreneur(誰でも起業家になれる)」をメッセージとして、ちょっと風変わりなHPには「ヨーロッパで野心的な起業家として成功するための12章」を公開しています。
ロンドン、ベルリン、パリの3カ所を中心にミートアップイベントなどを開催しており、スタートアップはHPから参加登録を行うことができます。起業家がいかに失敗から学ぶことができるのかなど、起業家にとってのセーフティネットとしても機能しています。

Hardware Club

(リンク:https://hardwareclub.co/

Hardware Club

ハードウェアスタートアップ向けのコミュニティベースのVCです。ヨーロッパ、イスラエル、アメリカ、アジアを対象に、アーリーステージのスタートアップを支援するプラットフォームで、量産化やサポートを提供する企業も参加しています。競合をいれないというのが特徴で、入っている企業同士が支援しあうという理念があります。
2017年に東京にも拠点を開設しています。

Hello Tomorrow

(リンク:https://hello-tomorrow.org/

Hello Tomorrow

ディープテックと呼ばれるロボットやAI、バイオ、宇宙開発、仮想現実といった最先端技術をビジネスと最速で結びつけるためのエコシステムを運営するNPOです。
未来を担う最先端の研究をいち早く世に出すことをめざし、30代の若者たちが2011年にスタートさせました。現在世界中に8拠点、1万5000人のメンバーが参加しています。日本でも2017年から本格的に稼働し、2018年末には日本でサミットを開催する予定です。

フレンチテックは若い世代の希望の光

フレンチテックの成功の要因は、このような仕組みやコミュニティがあることで起業のハードルが下がり、就職難に苦しむ若い世代の魅力的なキャリアプランとして、受け入れられているところにあるといえるでしょう。

私にはパリ在住のフランス人大学生のいとこがいますが、一般企業への就職は視野に全くいれておらず、「起業するためにMITでAIを研究するんだ」といって渡米しました。
将来はフランスに戻って起業するという計画とのことですが、そんな学生たちが周りにもたくさんいると言っています。

フランスのマクロン政権は、スタートアップを成功させることこそが、若くて優秀な人材を集めるために重要だと考え、フレンチテックを前面に押し出しています。ここが他の国と比べても大きな違いがある点だと言えるでしょう。

 

 

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DMM.make AKIBAでは企業向け会員プランをご用意しています。スタートアップとのマッチングを支援するイベントや、IoT時代を切り拓く人材を育成する研修プログラムも提供しています。

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上村遥子
DMM.make AKIBAでのコミュニティの活性化を担うコミュニティマネージャーと、スタートアップのリアルを伝えるエバンジェリストを兼務。フランス語を得意とし、FrenchTechとのコラボレーションやフランス語圏との案件も担当している。
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