DMM.make AKIBAのビジネスメディア「FACT」

他者との生の触れ合いが社員の意識を変える――タイカが目指すオープンイノベーション

素材メーカーや部品メーカーにとって、自社製品を利用する相手を見つけることは生命線ともいえる重要な活動です。

従来通りの商談を前提とした営業や展示会を実施するだけでなく、長期にわたるフラットな付き合いの中から、社内意識にも影響を与えるような新しいニーズを獲得する企業が現れ始めています。

 

DMM.make AKIBAでは、ものづくりを支援するスポンサー企業を募集し、スタートアップや会員の活動を長期にわたってサポートする制度があります。今回は、素材の提供からメイカソンの開催まで、スポンサーとして幅広い活動に取り組んでいる株式会社タイカの内田英之氏に、これまでの活動について伺いました。

 

受け身の姿勢では変化は起きない

 

株式会社タイカ 多機能素材事業本部 αゲル営業部 課長代理
内田英之(うちだひでゆき)氏

 

――DMM.make AKIBAのスポンサー企業として参加した理由を教えてください。

内田:当社の開発したαGELは衝撃吸収材、防振材や熱伝導素材として利用でき、メカトロニクスやエレクトロニクスとの相性が良いものです。DMM.make AKIBAの会員が作るIoTプロダクトに、双方で力になれるのではないかと思いました。

 

また、私の所属するαゲル営業部は法人向け案件がほとんどであり、引き合いも多いことから、どうしても受け身になりがちでした。そのような背景から、もっと発信力をアップさせることと、最終製品や個人向けのビジネスについて考えることを目的に、AKIBAの会員との交流を通じて社内の意識を変えていこうという目的もありました。

 

――社内でスポンサー活動への理解はどのように得ているのでしょうか。

内田:もともと、タイカでは新しいことへ積極的に取り組むことが全社的に推奨されています。スポンサーとしての参加も、研究開発本部長がDMM.make AKIBA会員のDmet Productsの方と知り合いで、会ってみたらどうかと勧められたことがきっかけです。

 

DMM.make AKIBAでは基本的に営業の私と研究開発室の2名の3人を中心に活動しているのですが、交流会がある時にはできるだけ他の社員に声掛けをして、ピッチを聞いてもらっています。開発だけじゃなくて営業のメンバーも誘って、普段の業務とは違う世界があることを見てもらう。私自身がここでの活動を楽しんでいて「こんな刺激もある楽しいことを独り占めしちゃダメだ」という意識があるので、啓蒙活動している感じですね。

 

――会員とはどのようなコラボレーションが生まれているのでしょうか。

内田:定期的に開催されている交流会に参加し、サンプルや製品・開発中の試作品を並べて、会員様やスポンサー企業の方からの反応を見ています。必ずしも案件ベースで考えているわけではなく、まずは雑談から始めてフラットな関係を作ることを強く意識しています。

 

筋電義手を開発しているMission Arm Japanさんには、共有スペースに展示しているサンプルを見てお声がけいただきました。指の腹のパーツをシリコンゴムなどで作っていたけれど、重いものがどうしても滑ってしまうという悩みを伺いました。弊社で試作品をつくったところ、780mlの水が入ったペットボトルをつかんで持ち上げることができました。義手のユーザーさんが笑顔で掴んで振っている映像を見させてもらったときは、報われたと感じましたね。

 

しっぽコール」を手掛けるtechikaの矢島佳澄さんには、柔らかいハードウェアを作る素材として関心を持っていただきました。自分のアイディアをIoTで実現していく彼女の姿勢は私たちにはないものだと感じたので、プロダクト開発とは別に契約を結び、タイカ社内でIoTセミナーを開催してもらうことになりました。アイディア出しのプロセスや電子回路を用いたものづくりを社内に広めていただいており、大きな成果だと言えます。

 

社内外を巻き込んだメイカソンが若手社員の自信につながる

 

――2018年5月にはαGELを題材としたメイカソンも開催されました。企画のいきさつを教えてください。

写真左はDMM.make AKIBAテックスタッフの渡邉仁史。メイカソンの企画・運営をサポートした。

 

 

内田:DMM.make AKIBAで開催された日本ロレアルさんとのBeauty X IoT Hackathonなどを拝見している中で、アイディアソンやメイカソンの実態を知りました。αGELの認知度をもっと高めたい、何か新しいものを打ち出したいという思いから、PRに繋がるイベントの企画をAKIBAに相談したのが始まりです。

 

渡邉:タイカさんの場合は「αGELのPR」が目的だということがはっきりしていたので、スムーズに企画が進んでいきました。後から色々なアイディアが出てきても、それがPRに繋がるかどうかという明確な基準に従って判断することができましたね。

 

内田:当初はアイディアソンだけのつもりだったのですが、物性値だけでは測れない情緒的な感触や感覚など、触らないと分からない部分がαGELには多い。また、アイディアだけ頂いても実現が難しいかもしれない、などのディスカッションを経て、プロトタイピングまで含むメイカソンを実施することになりました。

 

 

参加者は合計で35人。20代を中心に高校生から50代まで幅広い年齢層の人が集まった。審査員はタイカの開発チームやCAMPFIREのコミュニティマネージャー、東急ハンズ渋谷店のユニットリーダーに加え、「わくわくさん」としておなじみの久保田雅人氏が担当した。

 

――メイカソン当日の様子はいかがでしたか?

内田:当日はとにかく大変でしたね。

何が起こるのか極力想定したつもりだったんですけど、その上をいかれました。ゲルの試作はタイカの社員が担当したのですが、参加者が求めるハードルが高く、何度も試作にダメ出しを貰ったり、用意していた硬化炉がいっぱいになったりしました。開発メンバーにも6人参加してもらったのですが全然足りなくて、営業も製作作業を手伝うことになりました。

 

渡邉:想定の倍以上の参加者が型を作って試作していましたね。全体的にモチベーションが高く、専門的なスキルがない人でも手を動かしている姿が多く見られました。

 

審査員もそれぞれの立場から的確なコメントをくださり、プレゼンテーションでの質疑も盛り上がりました。久保田さんは楽しくなるようなアイディア、東急ハンズさんは店に置きたいか置きたくないか、タイカさんは「ゲルをちゃんと生かせているか」という素材的な観点。CAMPFIREさんは「クラウドファンディング受けしやすいか・成功のイメージが持てるか」を重視していました。

 

これはDMM.make AKIBAとしても初めての取り組みなのですが、大賞を取ったチームの作品はクラウドファンディングでの製品化に向けてプロジェクトが進んでいます。DMM.make AKIBAとタイカさんが制作のサポート、CAMPFIREさんがクラウドファンディング支援という体制でサポートしています。

 

 

内田:社内でも大きな関心が集まり、当日は他の事業部の人がわざわざ静岡から来てくれました。

若い社員もたくさん集まったのですが、自分たちと年齢の変わらないような参加者の頑張りに刺激を受けていたようです。普段は専門知識を持つエンジニアの方とのやりとりが多く、技術や物性についてのやりとりがメインになってしまうので、専門家でない人たちとアイディエーションの段階から交流できたのは貴重な経験でした。とくに営業1~2年目の子たちは、自分の知識を基にアドバイスできたので自信にも繋がったのではないでしょうか。

 

――スポンサーとしての活動を通じ、社内での変化はありましたか?

内田:メイカソンが終わってから、「自分だったらどういうものを作るのだろう?」というような議論が起こり、自分発信の意思が芽生え始めているということを聞いています。

受信中心からの脱却が果たされつつあるのは、スポンサー活動を通じた大きな変化ですね。お客様に対する提案という意味では法人向けの営業活動も自分から発信していくものなので、今後そこにも更に良い影響が出てくるだろうと思っています。

 

また、IoTについても非常に真剣に考えるようになってきました。これまではトレンドとしてなんとなく知っているというレベルだったんですけれど、techikaの矢島佳澄さんにもワークショップの講師として研究開発室に来ていただいて、IoTと自分たちの商材をどう組み合わせることができるのか、真剣に考えるメンバーが増えています。

 

他方、タイカ製品を利用した新製品はまだ実現していませんが、試作の度にもらう具体的なフィードバックは、商品改善や新規用途開拓などを考える源になっています。そういう意味では、開発だけでなく営業の視点でも良い影響がありました。

 

――今後はどのような活動に取り組んでいきたいですか?

内田:会員さんたちから学ばせてもらっているのは、アイディアそのものよりも、どういう経験で・何を思ったからそのアイディアに至ったのかという製品のストーリーです。積極的な交流を通じて同じような思考プロセスを身に着けることで、最終的には自分たち発信の製品を作りたいと思っています。もちろん、全てを自社で完成させることはできないでしょうから、その時にはここのメンバーが力になってくれるだろうと想像しています。

 

AKIBAには自分たちにないものが多く詰まっています。コア技術を磨くこと、我々であればαGELの開発に注力することは重要ですが、外部の方のアイディアは普段の活動からはなかなか得られませんので、スポンサー活動を通じて多くの事を学んでいます。

 

(取材・文:淺野義弘)

 

 

 

タイカ株式会社

タイカは衝撃吸収・振動防止用素材「αGEL(アルファゲル)」や、介護福祉用品「αPLA(アルファプラ)」の製造・販売、曲面印刷「CUBIC PRINTING(キュービックプリンティング)」「E-CUBIC」「S-CUBIC」「H-CUBIC」関連の製造・販売・技術供与など、独自技術のスペシャリストとしての技術研鑚とともに、新規事業の創造を推進している「技術開発型企業」です。

αGELをはじめとする多機能素材製品は、スポーツ、文具、デジタル家電などの産業から介護福祉用品まで様々な分野に提供しています。αGELの「柔らかさ」と優れた性能、そして、タイカの技術により、衝撃吸収、防振、感触、放熱など、多分野においてお客様のご要望に添った製品を提供し、スタートアップの皆様を、様々な方面からバックアップしていきます。

 

 

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