DMM.make AKIBAのビジネスメディア「FACT」

フラットな関係性がオープンイノベーションを成功させる――Open Challengeサポーター企業が重視する「伴走力」とは

DMM.make AKIBAでは、IoT・VR・AI等の先端技術を用いた革新的なプロダクトの製品化を目指すチームをサポートするアクセラレータープログラム「DMM.make AKIBA Open Challenge」を定期的に開催している。参加チームは、デモデイまでの3カ月間でアイデアや初期のプロトタイプを、企業や投資家などに対してプレゼンテーションできるクオリティになるまでレベルアップさせていくのだが、そのためにはサポート企業による課題の解決支援が不可欠だ。

 

今回、Open Challengeにサポート企業として参加いただいている富士通クラウドテクノロジーズ株式会社の福本和哉氏と織田晃弘氏に、サポーター企業としての視点からIoTやオープンイノベーションへの取り組みについてお話を伺った。

 

 

――始めに御社について簡単にご紹介いただけますか。

福本:富士通クラウドテクノロジーズ(以下、FJCT)は、エンタープライズ向けのクラウド事業を主軸とする事業会社です。元々はニフティ株式会社という名前でしたが、コンシューマ向け事業を切り離して2017年4月に分社し、社名を変更しました。クラウドサービスは「ニフクラ」というブランドで展開しています。また、「IoTデザインセンターby ニフクラ」(以下IoT DC)というソリューションサービスを提供しており、お客様の事業課題に合わせて、解決策の提案から実施まで包括的に支援しています。私たち二人はIoT DCのメンバーです。DMM.make AKIBAのOpen Challengeのサポートも、IoT DCとして参加しています。

 

IoT DCは2015年7月の立ち上げから、トレンドの技術などを活用しつつ新しい価値を作ることに取り組んでいます。当初はIoTが中心でしたが、現在はAI・データ活用に主軸を置いています。

 

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社の福本和哉氏(右)、織田晃弘氏(中央)、DMM.make AKIBA Open Challengeプロデューサーの岡島(左)

 

――Open Challengeでのサポート内容を拝見していますが、プロダクトの実装部分だけでなく、コンセプトの検証、いわゆるPoCによる検証にも重きを置かれていますね。

 

コンセプト検証の重要性

福本:IoT DCの強みとして、新しいプロダクトを考えるフェーズからコンセプト検証、そしてサービスインに至るまで、すべてのプロセスをサポートできることがあります。特にPoCなど検証プロセスを取り入れたアジャイルな進め方は得意です。

 

弊社ではアジャイル開発プロセスを取り入れており、スクラムの認定資格取得なども会社が支援しています。特に新しいことに取り組む場合、不確実性に対してリスクの予測や回避をするためには仮説検証というプロセスが大切と考えており、顧客向けのワークショップなどでもPoCの重要性を説明しています。

 

――技術開発の前にコンセプト検証をやらないと、開発した製品が市場から受け入れられるかどうかがわからないということですね。Open Challengeの中で、どのような手法で確認するのか議論できたことは、とても有意義でした。

 

福本:IoT DCでは、エンジニアやデータサイエンティストだけでなく、マーケターや営業出身のディレクターなど、ビジネス面を専門とするメンバーも揃っています。顧客の課題解決や新たな価値創出に向けて新しいことにトライしたり、最善のアウトプットを提供できるような機能横断なチーム体制を用意しています。

 

――Open Challenge 以外でIoT DCとして受注された案件をご紹介いただけますか?

 

福本:ヘルスケア用品大手のライオン様と、口臭が予測できるアルゴリズムを開発しています。スマホで舌の画像を撮影し、その画像から口臭リスクを判定します。現在はPoCを進めている段階です。

 

また、重機メーカー様と、重機の故障削減にも取り組んでいます。重機本体の動作データと、その動作による部品の被害ログを学習させることで、ある動作をした場合の被害量を予測するアルゴリズムを開発しています。これによって、操縦による部品の故障リスクを判定し、故障率の低下につなげられると考えています。

 

――御社にOpen Challengeのサポート企業をお願いすることになったのは、Open Challengeに応募してくるスタートアップの、技術的あるいはデータ活用の知見が足りないところをサポートできないかとお話したのがきっかけでした。その後引き続きサポート企業として参加いただいています。

 

Open Challengeの参加者から良い刺激を受けると語る福本氏

 

Open Challengeには新技術、新サービスとなる原石がある

福本:Open Challengeは、新しい尖った技術やサービスの原石が見つけられる場だと思っています。“0”から“1”を生み出す場であり、新しい発想で何かをやろうと思っている人や、斬新なプロダクトに接し、アイデアや製品化について、自由にディスカッションすること、それを実現するために一緒に歩いているという感じです。サポート企業という立場ですが、決してサポートしてあげているといった上から目線の関係性ではなく、参加者の一人としてコミュニケーションさせて頂いています。

 

――これまでのOpen Challengeでは、Communication Stick Project-A-C-T-(アクト)しっぽコール歯っぴ~などをサポートしていただいています。いくつかご紹介いただけますか?

 

福本:まずCommunication Stick Projectですが、介護施設を利用しているお年寄りで、外出はできるのだが1人では迷子や転倒が不安という方々向けに、介護者と常にコミュニケーションが取れるよう、「音声からテキストメッセージ送信」「受信したテキストメッセージの音声読み上げ」「転倒時の位置情報通知」の3つの機能を備えた杖です。

 

これはOpen Challengeでのディスカッションを経て、クラウドEXPOのFJCTブースにも出展してもらっています。

 

次に-A-C-T-(アクト)ですが、抱き合う、肩を組む、ハイタッチするなどのアクションによって光るスマートコミュニケーションウェアです。ライブや音楽イベント会場で、お客様同士のコミュニケーションを促進するのが狙いで、服の中に搭載した電子回路が接触すると光るというものです。

 

-A-C-T-ではかなり実装にも加わりましたが、要素技術として難しくはありません。ですが、触ると光るというプロダクトとしての面白さに、ワクワクしながら開発していました。J-POP SUMMITに出すという大目標もありましたし、チームとして大きな刺激を受けました。

 

――J-POP SUMMITということは、アメリカ西海岸まで行かれたのですね。いかがでしたか?

織田:大変でした。製品がプロトタイプレベルでしたから強度がボトルネックで、コイルやLED、配線の強度など、課題を抱えた状態での挑戦でした。渡航時にチェックツールとリペア用工具は持てるだけ持っていき、J-POP SUMMITの会場でテストや修理をしながらの展示となりました。

 

 

織田氏はJ-POP SUMMITにも参加した。

 

他にも、J-POP SUMMITは、白昼に自然光が入るような会場でしたので、光が見えづらく、LEDを光らせる輝度を上げなければ実用は難しい、など様々な課題も発見できました。

また、当時パナソニックさんが別の非接触型デバイスの商品を出されていて、一度お話が聞きたいなと思っていたら、たまたまJ-POP SUMMITにパナソニックさんの開発担当者がいらして、そこでエンジニア同士の技術的な意見交換ができました。参加したおかげで他社との繋がりができるという貴重な機会が得られました。

 

――Open Challengeにサポート企業として参加されるメリットは何でしょうか?

 

長い目でみて、将来的な協業パートナーを

福本:IoT DCでは顧客案件に加えて自社ソリューションの企画開発もしていますので、それらで経験したことはOpen Challengeの採択チームに伝えることができますし、逆にOpen Challengeの中で得られた経験は、自社のサービス開発にフィードバックできます。

 

織田:Open Challengeに対しては、短期的に利益を回収するとか、クラウドサービスやデータセンターのお客様に、ではなく、将来的なパートナーにと思っています。

 

IoT DCはデータ活用を主軸としていますが、データには集まればすぐお金になるという即効性はなく、ロングタームの取り組みになります。そのため、中長期で良好な関係性が築けるようなパートナーかどうかがポイントです。もちろん営業的な面もありますが、やはり課題解決に向けたデータ活用という共通目的のためにフラットに話ができる人とパートナーになりたいですね。Open Challengeという場がフラットですから、率直な意見交換ができますし、あまり他ではないスタンスで取り組めるので、個人的にはやり易いと思っています。

 

フラットな関係性と同じ方向を見ながら進めていける伴走力

福本:IoT DCではお客様の事業ドメインの知識を非常に重要視しています。弊社の専門ドメインはクラウドやシステム、ネットワークなどのITインフラですが、これらはあくまで手段の一つだと考えています。お客様の課題解決のためには、そのドメイン特有の商習慣や背景、ノウハウなどの知識が不可欠になります。これは弊社1社だけで考えて解決できることではなく、お客様の専門性も活かして一緒にやっていくことが、アウトプットを価値あるものにするためには一番近道なのだと思います。

 

IoT DCとしては発注をもらって何かを提案したり作ったりするという形にはなっていますが、同じ方向を見ながら進めていくという関係性の構築、我々は伴走力と呼んでいますが、こういう関係を大切にしています。これはOpen Challengeでも一緒なのかなと思います。

 

――近年オープンイノベーションを掲げる会社が増えてきています。先ほどの関係性を大事にしているというのは、オープンイノベーションにも通じるところがあるということですね。

 

福本:最近はマルチクラウドの考え方などが出てきていますが、各プロダクトとしての世界観を持ちつつも、世の中をもっと良くしたいという共通の考えが根底にあるように思います。ユーザがコンポーネント単位から組み合わせて利用できるようにAPIが提供されていたり、各々事業会社としてやることをやりつつも、自社利益のためだけではなく、全体としてより良い方向へ進もうという前提があるように思います。先の目的が同じ方向を向いていれば、お互い良い相互作用を与えながらそれぞれ進めていく、これもオープンイノベーションのあり方といえるのではないでしょうか。

 

――企業間の協業も進んできていますが、その関係性も垂直統合的なものから、よりフラットな関係、伴走するような立ち位置からリソースを出し合い、進めているチームが増えてきているように感じます。

 

福本:インターネットが普及し、様々な情報やサービスへのアクセスがしやすくなりました。そういった変化もあって、すべてを自社開発でという考え方よりも、社内外に関わらず、あるものを上手に使おうという考え方が合理的という雰囲気になってきたと思います。

 

例えば最近ブームになっている機械学習なんかも、少し前であれば、自分で理論を勉強して開発環境を作るところから始める必要がありましたが、今ではとりあえず触って試せるような開発ツールがたくさんありますし、使ってみた系の技術ブログもすぐ見つかります。既にあるものは使えば良いし、逆に自分たちが持っているものがあれば、それを世に出して使ってもらうことで、組み合わせや使われ方によってより価値を高められるという考え方が浸透してきたと感じています。

 

――様々なクラウドサービスが利用できるようになってくると、貴社としての独自性を生む必要もあるのかと思います。

 

データに独自の付加価値をつけて差別化をはかる

福本:クラウドやお客様と進めているサービスを通して独自のデータを集積し、それを元に独自の付加価値を付けるようなことがやりたいですね。独自のデータ、オリジナルのデータが今後価値を生み、他との差別化の鍵になると考えています。

 

Open Challengeでのパートナー選定でも、独自のデータが取れる可能性があるところ、データを使ってビジネスの価値を上げたいと思っているところを、サポートさせていただいています。Communication Stick Projectやしっぽコールなどは、ユーザの利用ログなどから独自のインサイトが得られる可能性があると考えています。

 

こうしたデータやプロジェクトをコアにして事業を作り、それらをマージして統合的なデータプラットフォームのようなものが独自に作り上げられればと思っています。独自データを保有することが、今後重要な戦略になってくると考えています。

 

――特にAKIBAへはどのような課題を持って参加されていますか?Open ChallengeやAKIBAへの期待があればお願いします。

 

Open Challengeではもっとコミュニケーションをとる必要があると語る織田氏(左)

 

オープンイノベーションはコミュニケーションが鍵

織田:Open Challengeでは、お互いのドメインの知識を、もっと相手に伝えていなかければいけない、学ばなければいけない、と思っています。それぞれの専門ドメインのリテラシーを双方向で上げていくためのコミュニケーションが、圧倒的に不足していると感じています。これまでサポート契約に至らなかったケースでは、お互いの期待値、相手のドメインに対する知識が乖離していることがありました。

 

我々のドメインはクラウドなので、クラウドやインターネットの利点欠点を正しく理解したうえで使い分けることができます。一方で、ハードウェアの深い部分など、その専門業界でずっとやっている企業の知識は教えていただく必要がありましたし、そういう部分でのコミュニケーションが互いに不足していたと思います。

 

今まではIT業界が積極的に他業界に入り込んでいく印象が強かったですが、最近は各業界も自らIT技術を取り入れる動きが進んできているように思います。そうした流れが加速して、良い意味でのカオスな関係になればと思っています。

 

――AKIBAでも、化粧品や食品メーカーなど、これまであまりIoTに関係してこなかったメーカーを巻き込んで活動しようとしています。

 

福本:AKIBAは外からの注目度も高いと思いますから、新たな業界を引き付けられるハブとして期待しています。弊社も独自のメッセージを発信したり、我々の活動を見せたりする部分がまだまだ足りていないので、これからも一緒にやっていければと思います。

 

(取材・文:後藤銀河)

 

 

DMM.make AKIBA Open Challenge 3 Demo Day

「DMM.make AKIBA」にて、2018年7月10日に、アクセラレータープログラムに採択された7チームの先端技術によるプロダクト発表展示会「DMM.make AKIBA Open Challenge 3 Demo Day」を開催します。

 

各チームからこのプログラムを通じてプロダクトがどのようにブラッシュアップされたかれから成長するスタートアップと来場する投資家や事業会社を中心としたビジネスパーソンとの繋がりを促進し、新たなシナジーを生み出す場です。この貴重な機会に、ぜひお立ち会いください。

 

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岡島康憲
DMM.make AKIBAの企画・運営及びエヴァンジェリストを担当。 電気通信大学大学院修了後、ビッグローブ株式会社にて企画運営を担当。 2011年、岩淵技術商事株式会社を創業。自社製品開発やハードウェア商品の企画支援を行う。 2014年よりDMM.make AKIBAにジョイン。 2017年、IoTセンサー向けプラットフォームを提供するファストセンシング株式会社を創業。
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