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スタートアップが集うのはCESやSXSWだけじゃない――フランス発オープンイノベーションイベント「VIVA TECHNOLOGY」とは

VIVA TECHNOLOGY 2018は2018年5月24日から3日間の日程でパリにて開催される

 

これまでフランスのスタートアップを支援するエコシステム「フレンチテック」について紹介してきましたが、フランスにはフレンチテックの枠組み以外でもスタートアップ向けのイベントが開催されています。
2016年に始まり今年で3回目となる「VIVA TECHNOLOGY(ビバ テクノロジー)」は、6万人を超える入場者と6000ものスタートアップが参加するイベントです。2017年の開催時は500人の発表者がピッチを行い、AXA、Cisco、Microsoftなどが主催する合計25時間におよぶDeepTechハッカソンが開催されるなど、参加者は最先端の技術革新を知ることができるイベントです。

そこで今回は、VIVA Technology(以下VivaTech)に2016年から参加されているFutuRocketのCEO美谷広海氏に、VivaTechについて詳しく教えていただきたいと思います。美谷さんは、Cerevo在籍時の2016年にVivaTechのピッチコンテストで優勝、2017年にはVivaTech側から招待されてピッチを行うなど、日本人でVivaTechにいちばん詳しいと言っても過言ではないでしょう。

 

各分野のトップ企業が集うオープンイノベーションラボ

上村:VivaTechは、グローバル企業の経営者やユニコーン、スタートアップの創業者などワールドクラスの著名スピーカーによる300もの講演や、ロボットやドローン、VR/ARを始めとする最先端技術に触れることができるディスカバリーゾーン、企業パートナーから提示された課題に対しスタートアップがソリューションを提示し、各ブースでのピッチや展示を行うオープンイノベーションラボなどから構成されています。
特にこのオープンイノベーションラボは、大企業とスタートアップをマッチングする興味深い取り組みですが、どのような企業が参加しているのでしょうか?

美谷:オープンイノベーションラボのパートナーとして参加するのは、基本的に各分野のトップ企業1社です。例えばフランスの通信分野には、Orange、Bouygues Telecom、SFRなど多くの企業がいますが、VivaTechに来ているのはOrangeだけです。
Bouygues group(フランスの企業体、建築、不動産開発、メディア、情報通信などのグループ企業を持ち、Bouygues Telecomはそのひとつ)も来ていますが、グループ内からはBouygues Telecomではなく建築分野の企業が参加しています。金融分野でもBNP Paribas(世界10大銀行の一角をなす大手銀行)以外は参加していません。このように各分野におけるトップ企業1社と選ばれたスタートアップによってオープンイノベーションラボが開催されます。

 

ファッションブランドのルイ・ヴィトン(LVMH)など、幅広い企業がラボパートナーとして参加する

 

美谷:オープンイノベーションラボでは、ラボパートナーが数カ月前に「チャレンジ」(解決すべき課題やテーマ)を提示、スタートアップはチャレンジを選んでエントリー、最終的に採択されたスタートアップが各パートナー企業のブースでピッチや展示を行います。また、企業やアクセラレーターなどが主催するピッチコンテストに参加するスタートアップもいます。

上村:VivaTechの面白さというか、他のIT系展示会とは何が違うのでしょうか?VivaTechならではの世界があるのでしょうか?

美谷:日本でも最近オープンイノベーションが話題になっていますが、VivaTechは2年前からやっています。Airbus(航空宇宙機器開発メーカー)やSNCF(フランス国有鉄道)、LA POSTE(フランス郵政公社)、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン:世界最大のファッション業界企業体)など、参加する世界的大企業がスタートアップのどこに興味を持っているのか、どういうところを支援しているのかが、手に取るようにわかるのが面白いところですね。

上村:どのような方々が来場しているのでしょうか?参加はフランスからが多いですか?

美谷:スタートアップはおよそ6000社が参加していますが、展示を行っているスタートアップの同業者が多いという印象です。やはりスタートアップ同士で連携できるという利点があるのでしょうね。あとは、大企業の新規事業担当者やVC、アクセラレーターも来ています。スタートアップの出身国としてはフランスが多いですが、ヨーロッパの他国からの参加も多いです。日本からは昨年はCerevoと、チカク(まごチャンネル)など数社が参加していました。

 

通信大手Orangeのラボは人気が高い

 

美谷:まごチャンネルは、Orange fabの枠で参加していました。Orangeはチャレンジの数も多く、とても人気が高いので、展示枠は半日しかないんです。ひとつのブースに2~30社が半日交代で展示するので、お目当てのスタートアップがいても見られないこともあります(笑)

上村:すごい人気ですね。ですが、スタートアップは注目を集めるのが狙いというのはわかりますが、大企業側のメリットは何でしょう?数十社のスタートアップと活動することで何を狙っているのでしょうか?

美谷:そうですね。VivaTechだけですべてを見通すことはできないかもしれませんが、私は大企業の研究開発の進め方は曲がり角に来ているのかもしれないと思っています。これまで大企業は研究開発に莫大な投資をしてきました。何十億何百億というお金で自社の研究開発センターを維持することに比べ、例えば1億円あればシード期のスタートアップ1社に500万円、合計 20社に投資できます。VivaTechに来ている大企業は、数億円をスタートアップに投資したとしても、イノベーションへの投資としては効率的と考えているのではないでしょうか?

上村:チャレンジでは、パートナー企業が自分たちの抱える課題をさらけだしているとも言えますが、日本ではあまり見られない姿勢に感じます。これはフランスならではの企業風土もあるのでしょうか?

美谷:そうですね、チャレンジを見ているとそのように感じます。今年の課題を見てみると、例えば賭博分野のPMU(フランス場外馬券発売公社)が「ゲームの未来をデザインする(Design the future of gaming)」という課題を出したり、SNCF(フランス国有鉄道)が「モビリティの未来をデザインする(Design the future of Mobility)」を提示したりと、かなり具体的な課題のケアができていると思います。また、Orangeはアフリカ/中近東というIoT新興国向けの課題を提起しているのも興味深いです。

上村:美谷さんはVivaTechの初回から参加されていたと伺いました。

美谷:はい、2016年にフランスのアクセラレーターekitoが募集していたピッチコンテストに参加したのが最初です。ekitoはブース展示枠はありませんでしたが、ピッチコンテストという枠を持っていました。そこで優勝したこともあり、2017年はVivaTechから招待されて参加し、コンテストではなくディスカバリーゾーンでピッチしました。そしてCerevoとしてTipronを展示いたしました。

上村:フランスでのピッチコンテストに優勝されたのは、すごい快挙ですね。

美谷:優勝の賞品として楯をいただき、トゥールーズに1週間滞在してekitoとのメンタリングを受けました。彼らとネットワークが出来たのは有意義でしたね。それがあったため、また2018年も訪れることができますし。

 

開催期間を通して数多くの展示とピッチが行われる

 

上村:日本の企業が、フランスのVivaTechの取り組みから学べることは何でしょうか?

美谷:VivaTechの場合、バイヤーが参加していないので、一般の展示会のように即商談ということにはなりません。関連する業界において中長期的な繋がりができることが大きいと思います。また、スタートアップにとっても、普段コンタクトが出来ない大企業の技術者や担当者と直接話せるのは大きなメリットです。

日本の場合だと、なかなか1企業が50社ものスタートアップを集めることは難しいと思います。10社くらいはできるかもしれませんが、日本でもこれくらいの厚みが出せるイベントが出てくることを期待したいですね。私も日本でオープンイノベーションにいくつか応募させていただいたことがありますが、海外に比べてハードルが高いと感じました。何とか企業とマッチングするところまでいっても、そこから先に進むのが大変です。
これには日本企業のマインドセットも関係しているのではと感じます。どういうことかというと、日本の会社はすぐに成果に結びつきそうな分かり易いものを選ぶような傾向があるのではないでしょうか。もちろん早く成果を出すことは大切ですが、もう少し裾野を広げる中長期的な視点も備え、その両方の見方をしていただければと思います。

確かにチャレンジのテーマの中には、ラボパートナー企業の利益や業績に直接反映するのかな?というものもありますが、これは会社として新しいことに取り組むというマインドの表れではないでしょうか。

LVMHは、Sigfoxを使ったスーツケースの追跡タグを作りましたが、そうした発想もVivaTechに参加するようになり、何かIoTを使ってやってみようというマインドになって初めて出たのだと思います。オープンイノベーションの流れの中から、副次的な効果が生まれているということなのかなと。

上村:最後に、VivaTechの魅力をあらためて教えてくださいますか。

美谷:VivaTechは、大企業が50社ものスタートアップのスポンサーとなって、一緒にひとつプロダクトを生み出すというスタイルが特徴です。ヨーロッパでは例えばSlush(フィンランド発のスタートアップイベント)などもありますが、VivaTechのような大企業とスタートアップの関係は他にはありません。大企業とスタートアップの双方が、何を考えているのかがよくわかる、すごく面白いイベントだと思います。

 

(取材・文:後藤銀河)

 

 

French Tech公認で2018年度の報告会を開催します!

当日は、スタートアップとして出展した企業や、日仏を代表する大企業からもスピーカーをむかえ
今年度のVIVATECHNOLOGY参加者からの注目すべきフレッシュなトピックスを報告します!

【FrenchTech公認】VIVA TECHNOLOGY2018 報告会
開催日時:2018/06/20 (水) 19:00 – 21:00
開催場所:DMM.make AKIBA 12F
イベントの詳細・お申込みは下記URLから
http://vivatech2018reportakiba.peatix.com

上村遥子
DMM.make AKIBAでのコミュニティの活性化を担うコミュニティマネージャーと、スタートアップのリアルを伝えるエバンジェリストを兼務。フランス語を得意とし、FrenchTechとのコラボレーションやフランス語圏との案件も担当している。
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