DMM.make AKIBAのビジネスメディア「FACT」

担当者だけが知る、コミュニティを脅かすもの/活気づけるもの――東京シェアスペース コミュニティマネージャー座談会

DMM.make AKIBA(以下、AKIBA)のような、さまざまな属性のユーザーが集うスペースの運営に必要不可欠な存在が「コミュニティマネージャー」だ。

基本的にはユーザーの困り事の相談から、ユーザー同士の交流の促進、スペースの内外をつなぐリエゾン的な役割など、仕事とミッションは多岐にわたる。しかし、スペースによってミッションや運営母体が異なることもあり、その仕事内容や肩書きは明確に定義されていない。

スタートアップの成長促進やオープンイノベーションにおけるファシリテーターとして、重要な役割を担うコミュニティマネージャーは新しい時代の職種である一方、ノウハウや必要なスキルセットが共有されていないため、孤軍奮闘する場面も少なくない。

2019年3月某日、東京でスタートアップの支援などに取り組む5団体から、コミュニティの運営に関わる5名がAKIBAに集まった。
「コミュニティマネージャーの問題意識を共有する会」として企画された当座談会では各スペースにおけるミッションや役割から、コミュニティマネージャーとは何か、そしてどうあるべきなのかを紐解いていく。

参加メンバー(2019年3月当時の所属・敬称略)
Plug and Play Japan ニコル角谷沙織アリーヌ
Startup Hub Tokyo 野崎麻衣
DMM.make AKIBA 上村遥子
Creww 永野祐輔
Neutrino 服部摩耶斗
ファシリテーター 柏木誠

 

【定義】コミュニティマネージャーの仕事/仕事ではないこと

最初の話題はコミュニティマネージャーの仕事について。スタートアップを起点に投資家や大企業、あるいはスタートアップ同士をつなぐことが業務のひとつだという共通の理解はありながら、各コミュニティの性質によって動き方や役職名は異なっていた。

Startup Hub Tokyoは東京都が運営する創業支援施設であり、野崎氏は連携開発部「アシスタントマネージャー」として、起業をめざすメンバーと民間の起業支援施設などとの連携を促進している。
場合によっては、メンバーに付き添い、共に話にいくこともあるそうだ。起業の構想やビジネスアイデアが詰め切れていないケースも多いため、施設としてその完成度を上げるサポートに取り組むことが重要だという。

Startup Hub Tokyo 野崎麻衣氏

Crewwの永野氏も大手企業にスタートアップを紹介する機会が多く、ときには営業のように付き添うケースがあると語る。ただし、そのためにはアポイントの時間を確保し、スタートアップと大手企業の双方を丁寧に調べなければならず、人的リソースが足りなくなるという課題を感じている。

AKIBAの上村は社内でもコミュニティマネージャーの仕事の範囲について意見は多いと振り返る。
会員はスタートアップだけでなく、企業、学生と属性も幅広く、コミュニケーションの対象領域が広い。そうしたことからサービスを、より効果的に企業に活用してもらうための企画営業的な動きも求められることもあるという。

Plug and Play Japanのニコル氏の肩書きは「プログラムマネージャー」。自社で運営しているアクセラレーションプログラムのマネジメントが主な役割だ。
Plug and Play Japanではアクセラレーションプログラムのコミュニティを運営するプログラムマネージャーと、Plug and Play Japan全体のコミュニティを運営するコミュニティマネージャーの役割があるが、今回はプログラムマネージャーとしての観点でコミュニティの運営の仕事について考える。
Plug and Play Japanのプログラムでは、個別に対応するだけではなく、プログラムの中でグループセッションを設定し、VCやスピーカーと採択企業を引き合わせる仕組みができている。

Plug and Play Japan ニコル角谷沙織アリーヌ氏

 

【ノウハウ】情報共有の仕方とコミュニティの育て方

コミュニティに対して魅力を感じてもらうためには、情報やコミュニケーションの機会を適切に提供していく必要がある。情報のチャネルや、活発なコミュニケーションを起こすための手段にはどのようなものがあるのだろうか。

海外とのつながりが強いPlug and Play Japanでは、海外ユーザーがビジネスでFacebookを使う文化になじみがないことから、国内外抵抗なく参加できるオンラインコミュニティの構築が課題だ。
Startup Hub TokyoAKIBAはFacebookのクローズドグループを、Neutrinoは入居企業とスポンサーが参加するクローズドなSNSグループを運用しているが、運営側から一方的に情報提供するだけでは、あまり活発な議論にはつながらないという。

活発なコミュニケーションに繋がらないという課題は、ネット上だけでなく、フィジカルな場でも同じようだ。

「飲み会の場を設定すると、大企業とスタートアップは言葉の壁があっても積極的に会話するが、スタートアップ同士はコミュニケーションを取ろうとしないこともある」と分析するのはPlug and Play Japanのニコル氏。
大使館を巻き込んだイベントを設定しても、アウェイだと感じたスタートアップが途中で帰ってしまう光景を見たCrewwの永野氏は、言語が無くても越えられるコンテンツの重要性を指摘した。

Creww 永野祐輔氏

海外との言語や文化の壁、スタートアップ同士が交流するきっかけの無さというハードルを越えるための支援は、コミュニティマネージャーの腕の見せ所かもしれない。

AKIBAの上村は、海外から大企業が視察に来た際には、スタートアップを積極的に紹介しプレゼンしてもらうという。つたない英語だったとしても、プロダクトが良ければ話が進むため、とにかくチャンスを与えることが重要なミッションだと語った。
Neutrinoの服部氏は新しい企業がコミュニティに参加する際に全ての入居企業に紹介することで、その後のコミュニケーションに繋ぐきっかけを作っている。

コミュニティマネージャーはスペースの雰囲気づくりにも大きく関わる。
Neutrinoの服部氏はスペースの運営責任者として頼みごとをしやすい「緩い」マネージャーの雰囲気を作り、家具や出前サービスなどの要望をすぐにコミュニティに反映してきた。AKIBAでは「適度にルールを破ってくれる会員」のおかげでルールの見直しできていることもあるという。

 

【課題】属人化問題と外的環境の変化

コミュニティの存在が運営者やコミュニティマネージャーに依存してしまうことは、「コミュニティの属人化」という表現で問題視されている。

Neutrinoの服部氏は「イベントの企画やお願いごとが僕個人のFacebookあてに届く。コミュニティでの自分の存在感が大きすぎる」と危機感を持つ。Crewwでは実際に特定業務における属人化問題において、職員の離職により以後の対応がしづらくなってしまったという問題も過去に起きたという。

こうした課題に対して、AKIBAでは複数人いるコミュニティマネージャー内で、話した内容や日付をオンラインのツールでデータ化し共有するようにしているという。
Plug and Play Japanでは、COOの持つ強いネットワークを生かすため、プログラムマネージャーとの顔合わせを行うだけでなく、マネジメントのためのマニュアルも整備されている。
人的なリソースが限られていたり、暗黙的な了解で成り立つネットワークが多かったりと課題も多いが、コミュニティマネージャー内でリソースを分散しておくことはひとつの有効な手段かもしれない。

DMM.make AKIBA 上村遥子

次いで大きな課題として挙げられたのは、コミュニティ外部の環境変化だ。制御できない大きな外的要因によって、コミュニティ運営が影響を受けることも少なくない。

この1年で過剰な期待が冷め、ハイプサイクルの幻滅期に入ったブロックチェーンや仮想通貨領域を扱うNeutrinoでは、「マーケットの様相が変わり、スタートアップもマネタイズがしづらくなった。お客さんも手を引き始めている」(服部氏)。技術的な変化が激しい領域では、5年はおろか、1~2年後のプランすら読むことすら困難だという。

AKIBAの上村は、民間企業の中でコミュニティを運営している限り、どこかのタイミングで経営的な判断が下されると語る。コミュニティを続けるに足る理由を説明し説得できなければ、経営判断として継続中止に至ることもあり得るだろう。

 

【KPIと目的】フットワーク軽く動き、業界全体を盛り上げる

コミュニティが持続していくためには、活動の成果を何らかの形で示していく必要がありそうだ。コミュニティマネージャーとしてのKPIは、どう設定すればよいのだろうか。

Plug and Play Japanではアクセラレータプログラム終了後にフィードバックミーティングを行い、細かなヒアリングを通じて成果を確かめる。スポンサー企業とのPoC検証やNDA締結の有無が評価の指標になり、日本の拠点設営を目指している海外のスタートアップであれば、現地法人の設立も評価項目に含まれるという。

ハードウェアスタートアップの事業成長を支援するAKIBAでは、その成果が出るまでに長いスパンがかかる。短期間で分かりやすい成果は出づらいが、関わった企業が自発的にAKIBAとの繋がりを語ってくれるため、場所やコミュニティの価値の評価に結び付いている。卒業した企業が資金調達したニュースなどが、自然に伝わってくる環境ができているようだ。

Neutrino 服部摩耶斗氏

Neutrinoの服部氏はコミュニティマネージャーだからこそできる目的として、「界隈全体を盛り上げ、パイやマーケットを広げる」働き方を述べた。自身の事業成長にフォーカスしなければならないスタートアップと比較し、コミュニティマネージャーは特定のジャンル自体の普及活動に取り組むことができる。例えばカンファレンス等の実施を通じて業界全体を盛り上げれば、めぐりめぐって自身の活動にメリットが生じることもあるという。

スタートアップの文化が盛り上がっているのも、今回の座談会に参加したような企業による空気づくりが大きな要因になっていると服部氏は分析する。AKIBAの上村は「スタートアップするということは、彼ら単独で成し遂げるには大きな困難がある。うまくパートナーや人材を獲得するためにも、コミュニティの活用は有効手段となりうる。さまざまな領域のコミュニティを盛り上げていくために、コミュニティマネージャーはハブとして動き回れるし、そうする必要がある」と締めくくった。

(取材・文:淺野義弘)

座談会の参加者。一番右はファシリテーターを勤めた柏木誠氏。

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上村遥子
DMM.make AKIBAでのコミュニティの活性化を担うコミュニティマネージャーと、スタートアップのリアルを伝えるエバンジェリストを兼務。フランス語を得意とし、FrenchTechとのコラボレーションやフランス語圏との案件も担当している。
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