DMM.make AKIBAのビジネスメディア「FACT」

「UXUIへの理解なくして成功はない」――ビジネスパーソンが知るべきUIUXの基本

ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)は、プロダクトやソフトウェアをユーザーが快適に利用する上で非常に重要な要素であり、プロジェクトの成功を左右するといっても過言ではない。
売上や顧客満足度を上げるという側面でも、職種に関係なくプロジェクトに携わる全てのビジネスパーソンがUI/UXの重要性を理解すべきといっても過言ではない。

「アプリケーション開発」「UI/UX制作」を手掛けるB.C.Membersが、UX設計の重要性から設計手法の事例、実装と検証方法などを解説するセミナーを2019年2月5日にDMM.make AKIBAで開催した。

今回は当日のセミナーからビジネスパーソンが理解すべき、UI/UXの基礎と実例について紹介したい。

セミナーの冒頭で、株式会社B.C.Members代表の西田悠貴氏は、「どんなにUIデザインが綺麗でも、UX設計なくしてプロダクトの成功はない」と、UX設計の大切さに触れ、どのようにしてユーザーのための開発を実現するのかを解説した。

株式会社B.C.Members代表 西田悠貴氏

UX(User eXperience)とは何か

初めにUX(ユーザーの経験)を正しく理解することで、UX設計の重要性がわかるとして、信号機の色を一例として提示した。

世界で使われている信号機の例。形状は多少違うが赤黄緑という色使いは同じだ

西田氏は、信号機は世界中の誰もが知るUXだとし、「赤は止まれ」「緑は進め」「黄色は注意」という認識は世界共通だと説明する。信号機の色自体はCIE(国際照明委員会)によって、赤・緑・黄・白・青の5色と規定されているが、それぞれの色に意味合いについての規定はないという。そしてここに「UX設計の重要性」があると説明する。

ユーザーが経験したことのないUX設計は混乱や事故を招くことになる

ユーザーが持つ経験や知識をベースにすること――UX設計の重要性

一般的な信号機の色の定義を変え、例えば「赤は進め」「黄色は止まれ」「青は注意」とした場合、誰もが違和感を持つはずだ。
これこそが誰もが持っているユーザーエクスペリエンスであり、「赤は止まれ」「緑は進め」「黄色は注意」というUX設計が行われて、世界的に統一されているという例になる。

つまり、ユーザーに経験したことがないUXを急に触らせようと思っても、ユーザーは触ることはできない。ユーザーの持つ経験や知識などをベースとしてUXを設計し、統一することが非常に重要となる。

UX設計は、「方針フェーズ」「調査フェーズ」「MVPフェーズ」の3段階で実施する

UX設計のキーポイントに続き、西田氏はB.C.MembersのUX開発方法について説明した。同社はリーンUXの考え方をベースに独自改良した開発フローを実装しており、具体的には「方針フェーズ」「調査フェーズ」「MVPフェーズ」の3段階で実施している。

UX開発フロー ――「方針フェーズ」

方針フェーズでは、「理想」「導線」「規則」「重要指標」を策定する

最初の「方針フェーズ」では、「理想」「導線」「規則」「重要指標」について、この順に策定する。
「理想」では、サービスの理想や目的、何を実現しようとしているのかを、クライアントと確認する。
次の「導線」は、どのようにユーザーは目的を達成するのかというロードマップのことだ。ユーザーがサービスの入り口から、最後に実施すべきアクションまで完了するまでの道筋を考える。
そして「規則」のところで、そのサービスに関する制限や条件を決める。例えばECサイトのWebサービスであれば開発言語や環境、決済手段などをクライアントとのヒアリングで決めていく。
最後は「重要指標」で、先に策定した「理想」の内容に基づいて、どの項目を重要視するのかを決める。これは例えば、多くのユーザーに使ってもらいたいなら、汎用的なUXを設計すべきだし、長く使ってもらいたいなら、生活に根差したUXが必要になるなど、重要指標に合わせたUX設計が必要になる。

UX開発フロー ――「調査フェーズ」

調査フェーズでは「顕在ニーズ」「潜在ニーズ」「重要ニーズ」「強み」「競合調査」「課題」を策定する

方針フェーズでユーザー像やサービスの目的、重要指標が明確になったところで、「調査フェーズ」に移る。調査フェーズでは「顕在ニーズ」「潜在ニーズ」「重要ニーズ」「強み」「競合調査」「課題」を策定する。

ここで、「顕在ニーズ」は既に明確化しているニーズであるのに対し、「潜在ニーズ」の調査には、サービスの内容や性質によっていくつかの調査方法を使い分けたり、組み合わせたりする必要があるという。

潜在ニーズの確認プロセスの例

西田氏は、潜在ニーズの調査手法として、「キーワード設定」を説明した。
初めに顕在ニーズを中心としたマインドマップを作成し、顕在ニーズ周りのキーワードを出す。出たキーワードをすべて切り出してクラスター分析をかけ、グルーピングし、グループ内での代表キーワードを抽出する。
設定した代表キーワードを、インタビュー調査やアンケート調査、Twitter調査などにかけ、調査結果を元にカスタマージャーニーマップを作成、それを「潜在ニーズ」として扱うというプロセスだ。

「顕在ニーズ」「潜在ニーズ」が上がったところで、次に「重要ニーズ」、すなわちその中で「サービスにおいて重要なニーズは何か」を決める。これには開発中に次々と新たなニーズを取り込み、結果として複数のニーズを内包することでサービスが陳腐化してしまうことを防ぐという目的がある。西田氏は、ここで「誰のための」「何の」サービスなのかをきちんと定義することが大切であることを改めて強調した。

その後の「強み」では、明確化した重要ニーズに対して、サービスがそれぞれどんな強みを発揮できるかを策定していく。これは、策定したニーズにきちんと刺さるものがあるのか、どのように刺すべきなのかを決めるフェーズだ。場合によっては、新機能を考える必要もある。

そして「競合調査」で他の類似サービスとの差別化を行い、「課題」を明確にする。このようにして、方針フェーズ、調査フェーズを経ることでサービスの全体像が概ね固まってきたところで、プロトタイピングを行う「MVPフェーズ」に入る。

UX開発フロー ――「MVPフェーズ」

MVPフェーズでは、「プロトタイピング」「体験・ヒアリング」「最適化」を行う。

MVPフェーズでは、「プロトタイピング」「体験・ヒアリング」「最適化」を行う。MPVはMinimum Viable Productの略で、実用可能な最小限の製品のことだ。具体的には「サービスのプロトタイプ作成」を例として説明を加える。

プロトタイプには実用化する際に必要な機能を実装するが、ここでのポイントは、この後に行う「体験・ヒアリング」の際にユーザーが機能を体験できるものであれば十分だという点。例えば、ウェブページだけを制作して、その裏で動くべきシステム部分は実際には実装せず、人が手作業でユーザーとやり取りする紙芝居でもよい。

MVPの目的は、データを取って分析することであり、サービスのプロトタイプを作る際は、実用可能なサービスを最低限の工数でミニマムに作ればよく、ユーザーからデータやフィードバックを得ることを重視すべき、ということだ。

完成したプロトタイプを使っての「体験・ヒアリング」では、ユーザーに制作したMVPを実際に触ってもらい、インタビューやアンケート調査を行う。

ここで西田氏は、同社の調査の特徴でもある「アイトラッキング調査」の有用性を説明した。

ユーザーの視点を見える化するアイトラッキング調査

例えばeラーニングのような動画コンテンツをユーザーに見せる場合、アイトラッキングを使うことで、ユーザーの視点がどこに行っているのか、見たいときに見たいものを見ているのかを、偽りのない生体信号として確認できる。インタビューの結果とアイトラッキングの調査と合わせることで、表面的な欲求だけではなく、ユーザーが体験している本質的な課題が分かる。

もちろん全てのサービスの評価にアイトラッキングが適用できるわけではないが、特にデジタルコンテンツではアンケート結果などの定性的情報の精度向上や、問題点の解決案作成など有効性が高いという。

そして最後の「最適化」で、「体験・ヒアリング」を行ったことによって出てきた情報を元にサービスを最適化する。ユーザーが求めているもの、新たに判明した課題などに対応するため、機能の追加や変更、あるいは削除など、方針フェーズ、調査フェーズなどで出た内容と照らし合わせながら、機能レベルまで落とし込んで策定する。

スピード感を持ってUX設計を最適化する

ここまでの「方針フェーズ」「調査フェーズ」「MVPフェーズ」をまとめて、UX設計の1回転となる。これで完了することもあれば、プロジェクトの規模によっては、もう一度方針フェーズから回すこともある。回す場合はスピード感を重視し、1回転を半月~1カ月ほどで行うとのことだ。

短い期間で設計を行い、ユーザーから早くフィードバックをもらい、最適化する。これを繰り返すことがUX設計に大切なことだと、西田氏はまとめている。

UX設計を外注する上で注意すべきポイント

続いて株式会社BRAIN MAGIC 開発部長兼プロジェクトマネージャーの甲斐頌久氏が、UX設計を適用したクリエイター向け入力デバイス「Orbital2」と、「UX設計を外注するうえで気を付けるべきこと」について、紹介した。ここでは後半部分の「UX設計を外注するうえで気を付けるべきこと」を取り上げる。

株式会社BRAIN MAGIC 開発部長兼プロジェクトマネージャー 甲斐頌久氏

甲斐氏は、UX設計を外注する際の注意点として、委託先のUX会社が表層的な調査だけではなく、本質を探す調査を行っているかどうかが大切だという。多くの場合、UXザイナーやディレクターの主観に基づく仮説をベースに画面遷移などに起こしているという。課題の確認についても、表層的なアンケートやインタビューではなく、ヒアリング対象者が朝起きた時から寝る時まで、何時になにやったのかなど、生活行動パターンから本質的な課題を見つけだすことが重要だと説明する。

簡単なインタビューでは「表面的な要求」しか聞くことができず、ユーザーの「本質的な課題」は氷山のように水面下に隠されている

 

そしてユーザーの課題を正しく把握するため、甲斐氏は委託先がどんな調査を行っているのか、どのようにUX設計に落とし込むのかを事前に確認する必要性を説いている。

加えて、UX設計で重要なことは、制作するではなく、ユーザーの課題をプロダクトに落とし込み、継続して改善を積み重ねて設計をブラッシュアップできるかだという。

また、ユーザーの声をプロダクトに反映させるために、より熱狂的なファンを捕まえ、関係性を構築する必要がある。特にアーリーアダプターが製品を広めていく上での重要なキーパーソンであり、ユーザーの声を最速でプロダクトに反映させるカギにもなる。そのため、アーリーアダプターの行動を観察できる仕組みを作り、よりよいUXへ反映させることが大切だと語る。

甲斐氏は最後に、「フォローアップしてくれるUX会社を選ぶこと」、「MVP(プロトタイプ)の切り出し方をPM任せにせず全員が納得できるまで話し合うこと」、「可能であれば開発組織の内製化を意識すべき」とまとめた。

 

リーンUXのポイント、「プロトペルソナ」

続いて登壇した株式会社B.C.Membersの井上史博氏のパートからは、「プロトペルソナ」について取り上げる。

株式会社B.C.Members 井上史博氏

 

ここでいうペルソナは、ユーザーリサーチを行い、そこから得られる属性的な情報や行動の傾向などを取り入れて実際の想定ユーザー、理想のユーザーに近いものを仮想の人物として作成し、カスタマージャーニーを歩んでもらうというものだ。

スピード感のあるミニマム開発にはプロトペルソナが有効

実際にペルソナをリサーチする場合、数カ月かかることがあるため、特に同社ではリーンUXの考え方から「プロトペルソナ」を使うとする。これは、詳細なリサーチをする前に、プロジェクトがターゲットとすべきユーザー、製品を使ってくれる想定ユーザー像を、ブレストによって半日程度で作るというものだ。

先に作ったペルソナに合う人を後から集めるという通常のペルソナ作成手順と比較して、検証も早くできるという。

井上氏は、プロジェクト初期にかかる時間コストを通常のペルソナ作成よりも抑えられるので、スピード重視の場合や調査コストのロスをなるべく少なくしたいミニマムな開発には特に効果的と、その利点をまとめている

(取材・文:後藤銀河)

 

 

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