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「スタートアップ」とは何なのか

2013年頃から今まで、日本では「第4次ベンチャーブーム」の最中にいるといわれる。日本政府もベンチャー企業育成を重要課題としており、企業への投資や人材育成に取り組んでいる。既存の大手企業も、小さな新興企業に積極的にアプローチし、新しい市場を開拓するビジネスアイデアや技術の種を模索している。

さて、この「第4次ベンチャーブーム」は「スタートアップ4.0」と言い換えられることもある。この「スタートアップ」「ベンチャー」という言葉は、果たしてイコールなのだろうか?

今回は、「スタートアップ」とは何か、その定義を再確認し、そこにおける課題について考えていきたい。回答者は、DMM.make AKIBAのエヴァンジェリストの岡島康憲。

 

スタートアップとベンチャーは違うの?

――そもそも「スタートアップ」と「ベンチャー」の違いとは

岡島:「ベンチャー」は、「リスクの高い領域でビジネスを行う企業」、「スタートアップ」は、「領域は関係なく、少人数で急激に成長する企業」です。日本では「ベンチャー」を、「スタートアップ」の意味だと解釈して使われているケースがとても多いです。

――「ベンチャー」は小規模な企業とは限らないということですか?

岡島:企業が1万人規模でも、「リスクの高い領域におけるビジネス」を行っていれば「ベンチャー」です。ベンチャーの例としては、Google、Amazonの初期が挙げられます。一方、スタートアップは、リスクの高い領域かどうかは関係なく、とにかく急激な成長を目指します。

――「急激な成長」とは例えばどういうことですか?

岡島:そこに明確な基準があるわけではないのですが、例えば「設定した課題を解決するプロダクトを創業から2~3年程度でローンチするチーム」だと、ベンチャーキャピタルなどが高評価するでしょう。一般的には、だいたい3~5年かけて急激な成長を目指すことになります。

また、リスクの高い課題に取り組むことが必須ではないにしても、急激な成長を目指すために、革新的なプロダクトやサービスを提供することが求められることになります。

――スタートアップのゴールについて

岡島:スタートアップのゴールの在り方はさまざまですが、その多くが「イグジット(Exit)」を目指します。イグジットとは、スタートアップに出資した人たちが、利益を手にすることです。イグジットは、「M&A」(他社に買収される)と、「IPOすること」(株式市場に上場)に大別できます。

スタートアップは、イグジットをできるだけ早く目指すことになります。早ければ、創業半年程度で、既存企業の一事業として買収されることもあります。

海外の事例としては、スマートホーム向けサーモスタットを開発していたNest Labs(2010年創業)があります。Nestは創業3年程度で製品を市場投入し、2014年にGoogleに32億ドルでバイアウトされています。また代替肉を開発するBeyond Meat(2009年創業)における2019年8月のIPOの例もあります。

――ビヨンド・ミートは創業からIPOまで約10年かかっていますね。

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代替肉を開発するアメリカのスタートアップ、Beyond Meat(Beyond Meatのinstagramより)

岡島:ぎりぎりまで資金調達しまくった後に上場しているからでしょう。リスクヘッジであると考えられます。米国のスタートアップでは比較的多く見られるケースで、リスクを考慮しながらIPOを慎重にする傾向があります。

 

スタートアップはどうやって資金調達をするか

――スタートアップは資金が尽きたら解散するしかありません。お金の問題は常につきものですね。

岡島:ある程度の資金を確保してから創業したとしても、どんどん減っていきます。ですから何らかしらの手段で資金調達が必要になります。

――資金調達の手段や金額について

岡島:例えば、「銀行から融資を受ける(借金)」「国や自治体から助成金をもらう」「投資家やベンチャーキャピタルに投資してもらう」ことです。国内スタートアップの資金調達の相場は、数百万~1数百万円程度のようです。海外の相場は、それより1桁以上多くなるといわれます。

――どれを使うのが一番なのでしょう。

岡島:それぞれの資金調達手段にはよしあしがあるので、方針や状況に応じて使い分けます。
銀行を利用する場合には、借金を返済しなければなりません。また、立ち上げて間もないスタートアップでは融資が受けられないこともあります。

ベンチャーキャピタルは、投資された資金の返済が要りません。また資金を投資してくれるだけではなく、経営支援を受けることも可能です。しかし、スタートアップとベンチャーキャピタル側の意思にギャップがあると、うまくいかない場合があります。また社会経験の浅い人たちや学生などが立ち上げた企業の場合、ベンチャーキャピタルの意向に従いすぎてビジネスの独自性を失ってしまうこともあります。

その点、銀行はベンチャーキャピタルのように、融資を受けたからといって、ビジネスについてコントロールしてくることはありません。
助成金も原則で返済が必要ないものです。ただし、一度申請した制度の取り消しが効かない、申請や入金まで時間がかかる、突然廃止されるといったデメリットもあります。

何を選ぶにしても、成功しているスタートアップの多くが、投資元と自社との間でビジョンや戦略を共有できており、信頼関係が築けていることは確かだといえます。また一度資金調達した後も、投資元を説得できる成果や材料がなかなか作り出せなければ、追加で投資を受けることは難しくなり、やがて資金が尽きて解散してしまうでしょう。

――調達した資金の使い方について

岡島:国内のスタートアップは資金を節約してしまいがちです。その一方で、自分たちが定めた目標や正しい目的に向かって、人材に、技術開発に、全速力で資金を使い切る企業もあります。後者が、スタートアップのあるべき姿かもしれません。

 

スタートアップには金も時間もない――協業について

スタートアップと企業とのマッチングを促進するイベントは、AKIBAでも頻繁に開催されている

――スタートアップと既存企業の協業が増えています。まず、スタートアップが既存企業と協業したいと考える理由は?

岡島:「開発中のプロダクトのクオリティを高め、新製品・サービスの市場投入をもっと早めたい」「これまでより多くの新規ユーザーを獲得したい」といったことです。

スタートアップは小規模なので、よい製品を市場に送り出すための環境や人材を自社の中に満遍なく備えられるわけではありません。「革新的なビジネスアイデアがあっても技術力がない」、逆に「高い技術力はあるが、革新的なビジネスアイデアがない」といったことです。また、製品の量産や販売ルートの拡大が課題になってしまうこともあります。そこを補う手段として、既存企業の協業があります。

――既存企業が、スタートアップと協業する理由には、どういったものがありますか

岡島:自社だけでは生み出せない新たなプロダクトやビジネスにいち早くかかわることで、将来的な利益を得たいと考えています。

――既存企業にとって、将来的な利益とは?

岡島:「自社技術や商材に社外からの意見を取り込むことによる多様な新製品(とそれによる売り上げ)」「スタートアップとの協業そのものがもたらすマーケティング効果」です。既存企業は、組織の大きさや歴史の長さがアダとなり、新しいモノを素早く生み出しづらく、かつスピード感に乏しい環境になってしまいがちです。そこで、スタートアップの持つ革新的なアイデアやビジョン、スピードといった力を借りたいということになります。

――協業は、それぞれの企業の欠点を補い合ったような企業が多いのでしょうか?

そういうわけではありません。ただ、そういった事例がメディアなどで比較的露出しやすい傾向で、そういうイメージが抱かれがちであるとは思います。欠点を補うためにタッグを組むのではなくて、とにかく共同で何か1つの目的に向かっていく、イーブンな関係での協業もあります。共同研究・開発はそういったスタンスですね。

――既存企業とスタートアップの協業は、うまくいかないケースもたくさんあると聞きます。その要因としては、何が挙げられますか。

岡島:「意思決定スピードが違いすぎて作業が進まない」「既存企業側の担当者異動」「一方が短期的な成果を追い求めすぎる」ことなどです。

スタートアップと既存企業のスピード感やカルチャーは大きく異なります。例えば、既存企業側の組織で上長の申請を通している間に、スタートアップが解散してしまうことがあります。また、既存企業側の担当者が組織都合で異動してしまい、後任がつかなくてプロジェクトが解散してしまうケースもあります。

資金調達の時と同様、やはりこの場合も「ビジョンや戦略を共有できており、信頼関係が築けていること」が大事になります。そのために、企業や行政などが行う、協業についての相談や、マッチング支援などを利用してみてもいいと思います。AKIBAでもそういう活動を行っていますので、使ってみてください。

(取材・文:小林由美)

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岡島康憲
DMM.make AKIBAの企画・運営及びエヴァンジェリストを担当。 電気通信大学大学院修了後、ビッグローブ株式会社にて企画運営を担当。 2011年、岩淵技術商事株式会社を創業。自社製品開発やハードウェア商品の企画支援を行う。 2014年よりDMM.make AKIBAにジョイン。 2017年、IoTセンサー向けプラットフォームを提供するファストセンシング株式会社を創業。
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