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ユニコーン企業数アジア3位――韓国スタートアップの今

韓国・ソウル市内にある「Soeul Startup Hub」。もともと病院だった建物をリノベーションし、スタートアップ向けのインキュベーション施設として韓国政府がオープンさせた。

政治・外交面での報道が日本国内では目立つ韓国。しかし、アジア圏では中国やインドに次いでスタートアップが活躍しているということをご存知だろうか。

スタートアップ企業やベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CB insightの調査によると、2019年5月8日時点でユニコーン企業リストに名を連ねる韓国のスタートアップは8社。アジアでは中国の89社、インドの16社についで3番手。日本はPreferred Networks1社のみだ。

※ユニコーン企業…創業10年以内の未上場で、評価額が10億ドル(1000億円)を超える・テクノロジー企業のこと

 

文在寅(ムン・ジェイン)大統領就任以降は中小企業や起業家を支援する政策を推進していることもあり、大企業からのスピンアウトも増えているという。
果たして、どのようなスタートアップが生まれ、どのようなビジョンを描いているのか。

 

自宅で手軽にスキャンできるAI体脂肪計

belloの試作機。

2016年創業のOlive Healthcareは腹部の内臓脂肪をスキャンできるデバイス「Bello」を開発するスタートアップだ。

Belloはスキャンした体脂肪データをクラウド上で処理し、AIが健康維持に関するアドバイスを行うIoTデバイスで、2020年中の販売開始を目指している。

創業者のSung-Ho Han氏はカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)ムーアがんセンターで検査用画像処理技術の研究開発に携わっていた。その際に予防医学の重要性と市場成長性に注目し起業を決意したという。

同社のコア技術は8種類の光センサーを駆使したセンシング技術とデータ解析のアルゴリズムだ。臨床データを機械学習させることで、制度の高いデータ収集とユーザーの疾病リスクを未然に防ぐアドバイス機能の実現を目指している。

アメリカではなく、韓国で起業したのは行政のスタートアップ支援制度によるものが大きいという。韓国では、さまざまな分野における社会課題をリストアップしてプロジェクト化し、解決しうる技術を持ったスタートアップに助成金を支給している。金額はおよそ500万円〜3000万円で、スタートアップはシード期の運転資金や開発費用に充てることができる。

Olive Healthcare創業者のSung-Ho Han氏

Han氏によれば世界的に予防医学が注目されていることもあり、行政による医療機器分野への支援は手厚いという。安全性や信頼性が求められる医療機器は製品化までの開発コストがかさみ、スタートアップとの相性は決して良くないが、同社は創業段階から行政や政府系ファンドの支援を受け、既にシリーズBでの資金調達も終えている。

アメリカでは医療機器として医療機関に販売する予定だが、韓国では市場が大きい美容業界にフォーカスし、ヘルスケアデバイスとして個人向けに売り込むという。それぞれの市場で提携するプラットフォームも異なり、法人向けでは病院や保険会社と提携し、消費者向けではAmazonやFacebookと連携を予定している。
これによって法人・個人両方のプラットフォームをカバーし、腹部以外のスキャナーや高齢者向け製品など、後続予定の製品の市場投入にも良い影響をもたらすという。

 

 7年間で200を超えるスタートアップを生みだすサムスン

スマートベルトWELT。日本でもmakuakeを通じてクラウドファンディングで資金調達を行った。現在は転倒防止機能を備えた高齢者向けモデルの開発に加えて、販売先の開拓を推進しているという

「WELT」は装着するだけで歩数や座った時間、腹囲などをリアルタイムで計測できるスマートベルトを開発するスタートアップだ。記録したデータはスマートフォンに転送され、肥満予防や健康維持に繋がる情報をユーザーに提供する。

同社はサムスンの新規事業創出インキュベーター「C.Lab」を経て、サムスンからスピンアウトしている。C.Labはサムスンが2012年に立ち上げたインキュベーターで、サムスングループの社員から新規事業のアイデアを募り事業化を支援している。

倍率1000倍という厳しい審査をクリアすると、それまでの業務を全て止めて新規プロジェクトにフルコミットで携わる。約1年間のプロジェクト期間中はサムスン社員からプロジェクトメンバーを募り、試作開発と並行して事業計画を具体化する作業に集中する。
最終的にはサムスンの経営層が継続可否を判断する。7年間に実施されたプロジェクトは約220件にもなるという。

WELTはCES 2016に試作品を出展した結果、現地メディアや来場者からの評価が高かったことが追い風となり、サムスンからの出資を受けてスピンアウトした。

WELTのSean Kang CEOはハードウェア・スタートアップだからこそ、大企業からの支援は必要不可欠だと語る。
「ソフトウェアのバグは後からでもオンラインで更新可能ですが、ハードウェア部分のミスは大きな損失につながるリスクがあります。資金面でも多くのハードウェア・スタートアップが量産の前段階で苦戦を強いられています。そうした環境のなかでサムスンの試作や品質管理、量産に関するリソースをフル活用できたことは、スタートアップとしては非常に大きなアドバンテージでした」

WELTの共同創業者 Sean Kang氏

WELTのようなスタートアップを毎年生み出しているC.Labは、その門戸を社外にも広げた。韓国・ソウル大学でハードウェア開発や企業に関する講座を一般向けに実施しているほか、国外にも拠点を設けるなど、サムスングループ社外からもアイデアを募っている。メンターにはC.Labのスタッフに加え、WELTのようなOB企業も関わっていて、サムスングループを中心としたスタートアップ・エコシステムができあがりつつあるようだ。

サムスン、LGでは作れないものを

ソウル市の中心地にあるロッテデパートの家電フロア。韓国国内の製品だけでなく、欧米やアジア各国の家電が揃う。

こうしたスタートアップの製品を売る側はどのように捉えているのか。
韓国百貨店チェーン最大手のロッテ百貨店で電化製品部門のチーフバイヤーを務めるHyun shoul Yoon氏は、スタートアップならではの新規性に期待しているという。
「家電全体の売り上げの約60%がサムスンとLGです。新規参入するメーカーやスタートアップにはサムスンやLGには無い独創的な製品を求めています」

既存の大手企業にはない製品を求める小売業界と、既存の事業の枠にとらわれない製品を生み出そうとする政府と大企業。スタートアップが生まれる環境が急速に韓国でも整いつつある。

(取材・文:越智岳人、撮影:越智岳人、桜庭康人)

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