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ここがちがうよ、スタートアップと大企業

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ここ数年、スタートアップと大企業がオープンイノベーションで組む、というケースが増えてきています。特にハードウェアを商材として短期間で急激な成長を目指す少人数のスタートアップにとって、すでに大きな市場を持っている大企業と組み、ニーズをうまく捉えて自社製品の拡販につなげることが、その企業価値を高める成功への近道になります。

スタートアップにとっての連携メリットは、大企業が持つ技術/製造機能/物流機能が活用できること、大企業にとっては、自社の技術を活かした新たな企画の発掘や、製造や物流などの余剰リソースの活用などが挙げられます。

フィリップスの成功

一例として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2016年に発表したオープンイノベーション白書より、オランダの家電大手フィリップスの事例をご紹介します。

同社は、2010年に発表した全社戦略Vision 2015により、「世界クラスのオープンイノベーション企業を目指す」とし、2015年までに、差別化の鍵となる技術の外部からの導入比率を50%にすることを活動指針として取り組みました。

そしてこうした活動の中で生まれたのが、油を使わずに揚げ物ができる調理器「ノンフライヤー」です。オランダのベンチャーAPDSが開発した、高温の熱風を循環制御する技術を取り込むことで、わずか1年で製品化に成功、全世界で数百万台を販売する大ヒット商品になりました。

こうしたケースは、大手企業が必要とする要素技術をスタートアップが提供し、スタートアップが持っていない販路やバックヤードを大手企業が提供するという、協業が成功する理想的なモデルといえるでしょう。

協業の成功を阻害する要因

その一方で、スタートアップと大企業との協業がうまく行かないケースも増えてきています。
斬新なアイデアをもつスタートアップと、新たなビジネスを求める大企業という点では同じなのですが、何が原因でうまく行かなくなるのでしょうか。私がこれまで見てきた多くの事例を振り返ると、スタートアップと大企業の間には、いくつかの「ギャップ」があることがわかってきました。

スタートアップと大企業のスピード感の差

まず大きな違いとして、スタートアップと大企業のスピード感の差があります。
少人数のチームで開発を進めるスタートアップでは、意思決定や開発のスピードは大企業の何倍も速いと言われています。それに比べ、大企業はプロジェクトを進める上で多くの関連部署との調整が必要だったり、定められた意思決定プロセスに従う必要があったりと、即断即決が難しいという事情があります。
お互いがこうした「企業体質」の違いを理解しないと、打ち合わせばかりで開発が進まないとか、正式な手順に従わずに作業するなど、相手とのやりにくさばかりが目立ってしまい、協業はうまく進みません。

コミュニケーションの問題

また、コミュニケーションの仕方も問題になります。
例えば、自社製品を大手企業に納品することを望むスタートアップであれば、大企業がもつ既存のサプライチェーンの中に組み込むだけで目的は果たせます。ですが、共同してプロジェクトを進めようとする場合、大企業側がスタートアップを対等に扱わず、上から目線のコミュニケーションをとったらどうなるでしょうか。プロジェクトの一員として一緒に考えようとせず相手に丸投げしたり、アイデアを練り上げるのではなく問題の指摘だけをする評論家のような発言を繰り返したりでは、協業は物別れになりかねません。

会社の規模が比較にならないほど違う大企業とスタートアップでは、ひとつのプロジェクトにかける熱量の大きさが変わるのは当然です。スタートアップは、すぐにアウトプットを出して会社の業績を上げなければなりませんし、逆に多くの人が組織の中で動いている大企業では、何をするにも決められたルール、手順に従って行動する必要があります。

本当に必要なのは互いのリスペクト

先のフィリップスの事例でも、NEDOの白書はその成功要因のひとつに、トップダウンでオープンイノベーションに「外から選ばれる企業になる」という明確な戦略の打ち出しがあり、全社員が積極的に参加。その結果パートナーとWin-Winの対等な関係を構築できたことを挙げています。

大企業の担当者は、スタートアップの持っているアイデアや技術を正しく理解し、合意した日程(それが短納期だとしても)を順守し、相手に対するリスペクトを忘れてはいけないと思います。
実際に、大企業側の担当者がプロジェクトに必要な技術をきちんと理解し、意思決定のできる上位者をうまく巻き込んで進めることで、テンポよく開発が進捗していった事例もあります。また、スタートアップ側も大企業側の実情や仕事上の約束事があることを理解し、それを尊重する必要があります。こうしたギャップの存在を認識し、双方が歩み寄るようなコミュニケーションこそが、協業を成功させるために大切な心がけになります。

(聞き手、編集:後藤銀河)

 

 

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岡島康憲
DMM.make AKIBAの企画・運営及びエヴァンジェリストを担当。 電気通信大学大学院修了後、ビッグローブ株式会社にて企画運営を担当。 2011年、岩淵技術商事株式会社を創業。自社製品開発やハードウェア商品の企画支援を行う。 2014年よりDMM.make AKIBAにジョイン。 2017年、IoTセンサー向けプラットフォームを提供するファストセンシング株式会社を創業。
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